eスポーツを「スポーツ」とみなせるかどうかについて、エネルギー消費量や心拍数といった生理的指標の観点から分析した研究論文が発表されました。マサリク大学のJiří Kotas氏らを中心とする研究チームが、過去に発表された関連研究を体系的にレビューし、ゲームプレイ中の身体反応を検討したものです。
研究の概要
本研究は「eスポーツ選手のゲーム中のエネルギー消費量(Energy Expenditure of Esports Athletes During Gameplay: A Systematic Review)」と題された論文で、複数のデータベースから抽出した論文のうち、適格基準を満たす5件の先行研究を統合・分析しています。対象研究では『League of Legends』『Dota 2』『Counter-Strike: Global Offensive』『オーバーウォッチ』『Paladins Champions』『FIFA』など、MOBA、FPS、スポーツシミュレーションといった複数ジャンルのタイトルが扱われていたとのことです。
計測手法としては、主に酸素消費量と二酸化炭素排出量から算出する「間接熱量測定法」が用いられており、安静時とゲームプレイ時のエネルギー消費量を比較する形で調査が進められています。ただし研究ごとに実験条件や対象者の熟練度が異なるため、著者らは研究間の単純比較には限界があるとしています。
カロリー消費は微増、しかし心拍数は大幅上昇
分析結果によれば、ゲームプレイ中のエネルギー消費量が増加した研究がある一方で、有意な差が確認されなかったケースも報告されています。もっとも高い上昇率を示したKocak氏の研究では、安静時の1.75 kcal/分からゲームプレイ時に2.44 kcal/分まで上昇したものの、その差は0.69 kcal/分にとどまりました。1時間換算では約41.4 kcalで、これは「みかん1個」「ちくわ1本」「炊いたご飯 大さじ2」程度に相当する数値です。
また、ゲーム内のAPM(Actions Per Minute)とMETsの間に正の相関がみられたことや、熟練度が高いプレイヤーほど消費エネルギーが増加する傾向にあることも報告されています。
一方で、心拍数の変化については取り上げられたすべての研究で上昇が確認されています。Haupt氏らの研究では、安静時に約85bpmだった心拍数が、ゲーム開始から10分以内に約137bpmまで急増したケースが報告されており、これは高ストレス状況下と同様のパターンを示すとのことです。血糖値やコルチゾール値の上昇、HRV(心拍変動)の低下も一貫して観察されており、心理的ストレスの影響が示唆されています。
eスポーツはスポーツとみなせるのか
著者らは、eスポーツのプレイ中には「高心拍ではあるが身体的な負荷は低い」状態が特徴的にみられ、運動による代謝活性化とは異なるメカニズムで身体に影響を及ぼしている可能性を指摘しています。エネルギー消費の増加自体は小さく、eスポーツを「運動」と捉えることは難しいとの見解が示されました。
そのうえで論文では、国際オリンピック委員会(IOC)に正式にスポーツとして認められているチェスにおいても生理学的変化が生じるという先行研究に触れ、身体的な動きが激しくなくとも高度な思考や判断が求められる競技として、eスポーツが将来的にスポーツとして再定義される可能性についても言及しています。
参照元: AUTOMATON