2026年8月25日、gamescom 2026の開幕前日に開催された開発者向けカンファレンス「gamescom dev 2026」にて、ゲームライティングに関する講演「WRITE BETWEEN THE LINES: Writing Games for a Polarized, Distracted, Media-Illiterate World」が行われました。Turtle Rock Studiosでナラティブリードを務めるDolin氏が登壇し、社会が分断され、人々の注意が短い刺激に奪われる時代において、ゲームの作り手はどのように物語を届けるべきかを語ったとのことです。
観客・クリエイター・経営側の3者が抱える優先事項
講演でDolin氏は、ゲーム業界の現状として、欧州主要市場での売上が伸びる一方でスタジオの閉鎖が相次いでいる状況に触れました。プレイヤーの時間を奪い合う相手はほかのゲームだけでなく、SNSや映像配信など注意を引きつけるために設計されたあらゆるデジタルメディアに広がっているとしています。
そのうえで氏は、観客・クリエイター・経営側という3者がそれぞれ異なるものを優先していると整理しました。観客は感情を動かす体験を求め、クリエイターは表現と生活の両立を必要とし、経営側は利益や納期、従業員の雇用維持に責任を負います。安定を重視することが、リスクや野心を重視することより道徳的に劣るわけではなく、大切にしているものが異なるだけであるという視点が示されました。
「安全な物語」と「見えない作品」
強い主張を持つ物語は反発を招く可能性がある一方で、誰かに深く届く可能性もあります。逆に誰の感情も刺激しないよう作られた作品は、問いも反応も生まないまま多くの作品に埋もれてしまう恐れがあるとDolin氏は指摘しました。
氏は、作品への具体性やニュアンスのある批評と、感情的で反射的なバックラッシュ(レビュー爆撃など)は区別されるべきだとし、作品を世に出した時点で作り手は受け取られ方を完全には制御できなくなること、そして作品の成否と作り手自身の人間としての価値を切り離すことの重要性を語りました。
Layered Storytellingとメディアリテラシー
アテンション・エコノミーのなかで物語を届ける方法として、Dolin氏は「Layered Storytelling」を提示しました。これは物語をナラティブ部門だけで完結させず、アート、環境、サウンド、ゲームデザイン、UI/UX、演技といった複数の層を使って伝える手法です。文章を短くすることが目的ではなく、プレイヤーが好奇心から情報を発見したくなる形で提示することが重要だと強調されました。
また、リーダーから自分の価値観と衝突する修正を求められた際の話し合い方として、非公開の場でリアルタイムに話すこと、「嫌いだ」と言うだけでなくデータと代案を用意すること、相手の異なる優先事項を尊重して開かれた姿勢で聞くことを挙げています。講演は、業界に望む変化をまず自分自身が体現してほしいという言葉で締めくくられました。
参照元: 4Gamer.net