コンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」にて、7月24日、任天堂による『ドンキーコング バナンザ』のQA(品質保証)をテーマとしたセッションが実施されました。同作でテクニカルリードプログラム/ボクセルプログラムを担当した栗原竜矢氏と、オブジェクトプログラムを担当した濱崎福平氏が登壇し、開発中の取り組みについて解説を行いました。
QAの軸は「体験ファースト」
『ドンキーコング バナンザ』は、ピクセルの3次元版にあたる「ボクセル」を採用しており、自由度の高い破壊表現や、地形に物を投げつけて道を作るといった遊びを実現しています。この特徴を踏まえ、QAの方針として掲げられたのが「体験ファースト」という考え方です。
具体的な軸としては、「楽しく安心して破壊できる」「制約を増やさない」「面白いなら活かす」の3点が示されました。バグへの対処によってプレイヤーができることを減らすのではなく、良い体験につながるものであれば、調整のうえで仕様として組み込む方針が取られたとのことです。
また、破壊と地形変更の自由度が高いことから、想定された攻略順を無視して先へ進める「シーケンスブレイカー」も発生しますが、順番を無視した場合でもセリフの差分や収集アイテムの取得などに違和感が出ないよう配慮していたことが説明されました。
最適化はチーム全員で、テスターは開発初期から参加
最適化について栗原氏は、破壊時に大きな負荷がかかることを踏まえ、破壊の自由度を落とすのではなく通常時の負荷を下げるアプローチを採ったと説明しました。ステージ毎にチームを編成し、プログラマーだけでなくアーティストやレベルデザイナーも含めた全員で最適化にあたったといいます。進捗確認のために自動で更新される可視化機能や、他チームの状況を日々周知する担当者も用意されました。
デバッグ体制については、任天堂の子会社であるマリオクラブ(京都)から出向という形で、テスターを開発初期段階から開発チームの一員として迎え入れたとのことです。テスターが開発者ミーティングに参加し、レベルエディタで仕様を確認できる環境を整えることで、「問題が起こりそうな操作」を予測したうえでの検証が可能になったと濱崎氏は語りました。
自動テストとバグから生まれた仕様
デバッグ支援としては、ボクセルを直接操作・復元する機能や、表面のマテリアルを変更できる機能に加え、スクリプトを用いてゲームを最初から最後まで自動でプレイする自動テスト機能も用意されました。これらのデバッグ機能の一部は、プレイヤーが遊べる「DKアーティスト」にも活用されているとのことです。
テスターによる想定外の高度な操作の検証を通じて、面白いバグやタイムアタック的にギミックをスキップする遊びも発見されました。例として、レースを丸ごとスキップして次のマップへ移動する事例が挙げられ、発見時はバグだったものの、実装にあたってはその後のセリフ差分も追加したことが明かされています。
セッションの結びとして、両氏は今回のQAを「マイナスを減らすだけでなくプラスを活かし伸ばすQA」と総括しました。なお、本セッションはオンライン配信も行われており、対象パスの登録者は8月3日10時までタイムシフト配信を視聴可能です。
参照元: GAME Watch