2026年7月22日から24日まで、パシフィコ横浜ノースで開催されたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2026」において、格闘アクションのモーション制作をテーマにした異色の講演「連続攻撃アクションと多人数格闘アクションのアニメーションデザインレシピ 〜中国武術実演をそえて〜」が行われました。登壇したのは、ナムコ(現・バンダイナムコスタジオ)で『鉄拳』『ソウルキャリバー』シリーズ初期のゲームデザインおよびモーションディレクションを兼任した石黒氏と、中国武術家の佐藤氏の2名です。
リアル・演技・外連味の3層構造
石黒氏は講演の冒頭で、扱うテーマが人型キャラクターの「格好良い動作の流れ」を表現するためのリアルな身体操作と、それを格闘アクションのアニメーション表現に応用するコツであると説明しました。
そのうえで、アニメーションデザインコンセプトは「リアル」「演技」「外連味(けれんみ)」の3層構造として捉えられると解説。土台となる物理法則や解剖学に基づくリアルの上に、キャラクター性を表現する演技、さらに誇張演出の度合いを決める外連味が乗るという考え方です。リアルと外連味のどちらを重視するかはプロジェクトごとに異なり、優劣はないという点が強調されました。
運動学の基礎としては、動作を準備・主要・終末の3局面に分ける「局面バランス」と、床反力と重心の並進運動で生んだ力を関節の回転で連鎖的に伝える「運動連鎖」が紹介されました。
中国武術の実演から読み解く事例研究
講演では佐藤氏による中国武術の実演を交えつつ、開発現場でありがちな悩みへの回答が示されました。
象徴的な題材として取り上げられたのが「膝の位置」の問題です。攻撃ポーズに力強さを出そうと前傾姿勢を深め、前足の膝を突き出す作り方はむしろ窮屈になりがちだと指摘されました。佐藤氏によれば、これは膝が前に出ているのではなく、腰が後ろに残って足が下がっている状態であり、膝を抑えめにして足を前に出すことで全身が連動するとのことです。ただし、フォロースルーや着地など理由がある場面では膝が前に出ても違和感がないと補足されました。
長い武器を「軽く」見せてしまう問題については、まず軸に武器の重心を近づけ、脊椎の伸展・回旋と肩甲骨の動きで加速させることが重要であると実演を通じて示されました。重い武器の斬り下ろしについても、仆歩式・十字式・ピッチング式という3パターンが提示されています。
構成の発想と1対多の戦闘設計
講演後半では、格闘アクションの構成をどう組み立てるかがテーマとなりました。石黒氏は、攻撃手段(打撃・掴み・投げ)や防御手段(受け・捌き・弾き・回避)を要素分解して並べる手法を提示。「最後にこうしたい」というゴールを先に決め、そこにつながるように手前の動作を組み替えていく発想の順序が説明されました。
1対多の展開については、派手な回転攻撃ではなく、体捌きで相手の裏に回る動きや、相手を掴んで盾にする「ヒューマンシールド」、武器を奪う「ディスアーム」など、やられ側の制御を活用して戦闘リズムに緩急をつける手法が紹介されました。
講演の締めくくりとして石黒氏は、リアルという出汁をベースに、創作で味付けし、外連味のスパイスで個性を主張するというまとめを提示。「開発したオリジナルレシピのアニメーション表現で、見る人たちを魅了してほしい」と開発者に呼びかけました。
参照元: 4Gamer.net